あなたは、なぜ時間が経ってもカット野菜が変色しないのかご存じですか?
普通の野菜と比べて、シャキシャキ感が続く理由を知っていますか?
カット野菜の鮮度やシャキシャキ感と殺菌消毒には密接な関連性があります。
そして、ネット上で公開されているカット野菜の殺菌消毒に関する情報の中には、「カット野菜が変色しないのは薬漬けによる影響」、「殺菌剤プールに漬けられたカット野菜は栄養が抜け落ちている」など、健康を維持したり野菜不足を解消するためカット野菜を食べようと思っている人には信じたくないような意見があります。
一方、カット野菜は有害でやめたほうがいいと訴える否定的な見解とは逆に、「カット野菜はきちんと殺菌消毒されているため、普通の野菜よりむしろ安心」、「ゴミが少なく、いつでも安定した価格で必要な時に必要な分だけ手に入るので無駄が少なく経済的」などと、殺菌消毒による安全性の高さや使い勝手の良さを評価する意見も少なくありません。
はたして、私たちはどちらの情報を信用すればよいのでしょう。
すでにカット野菜を食べている人も、これからカット野菜を食べようと考えている人も、偏った情報に振り回されるのではなく、カット野菜が変色しない理由や野菜の殺菌消毒に関する正しい情報や判断力を身に付けた上で、カット野菜が本当にメリットのある食材なのかを見極めたいものですよね。
といわけで、今回は、カット野菜が変色しない理由はもちろんのこと、カット野菜と密接な関連性を持つ殺菌消毒の安全性や健康への影響などについて、分かりやすくご紹介していきます。
カット野菜の殺菌消毒に関する知識は、コンビニのサラダやサンドイッチにも共通する重要な情報なので、カット野菜を食べている人だけでなく、コンビニを利用する機会がある人も、これからご紹介する情報を有効活用してくださいね。
1.カット野菜はなぜ変色しないのか
カット野菜が普通の野菜と比較し、変色しにくかったり、シャキシャキ感が続く理由としては、普通の野菜に比べ細菌による腐食の影響が小さいことがあげられます。
つまり、野菜をカットした後に殺菌消毒を行うことはもちろん、雑菌に触れる可能性を最小限するパッケージをしたり適切な温度管理を行うことなどにより、細菌の影響による腐食を最小限の抑えることに成功したのがカット野菜なんです。
また、カット野菜を使用して作られているサラダには、変色を防いだり、鮮度を維持することを目的に食品添加物が使われているケースも少なくありません。
つまり、スーパーやコンビニに並んでいるサラダの新鮮さは、「腐食対策」と「食品添加物」によって維持されているのです。
では、カット野菜はどんな方法で殺菌消毒され、スーパーやコンビニに並んでいるサラダはどんな食品添加物によって、品質を維持しているのでしょう。
では、それぞれの方法について、詳しくご紹介しますね。
1-1.カット野菜の殺菌消毒方法
カット野菜の製造工程は、大きく分類すると、以下のようになります。
- 野菜を準備
- 野菜に付着している泥や虫を取り除く
- 芯や皮など不要な部分をカット
- 殺菌消毒
- 脱水
- パッケージ
- 検査
- 出荷
そして、現在、行われているカット野菜の殺菌消毒方法は、大きく次の3つに分類することができます。
1-1-1.薬品を利用した殺菌消毒
カット野菜の殺菌消毒として、最もよく知られているのが、薬品を使用した方法です。
カットされた野菜を薬品が含まれた水溶液に浸すことによって、菌を除去します。
そして、カット野菜の殺菌消毒に使用する具体的な薬品名として、最も有名なのが「次亜塩素酸ナトリウム」です。
次亜塩素酸ナトリウムは、アンチホルミンという名称で食品添加物として認可されている塩素系成分で、カット野菜の袋を開けた時に、塩素っぽいニオイがする理由の多くが、次亜塩素酸ナトリウムによる洗浄の影響だと考えられています。
また、次亜塩素酸ナトリウムは、塩素系漂白剤や殺菌剤としても利用されていたり、EUでは食品への添加が禁じられているため、毒性により危険性が指摘されている物質でもあります。
しかし、カット野菜に使用する次亜塩素酸ナトリウムは、上水道やプールの殺菌に使用されている成分であり、殺菌消毒の際カット野菜に付着した次亜塩素酸ナトリウムは、充分な水洗いや脱水処理など十分な衛生管理が行われた上で、スーパーやコンビニに並ベられています。
1-1-2.オゾンを利用した殺菌消毒
オゾンとは、自然界にもある一般的な物質で、3つの酸素原子で構成される酸素の同素体です。
このため、薬品を使用する方法と比較し、環境に優しく安全性が高い殺菌消毒方法として注目されています。
そして、、薬品を使用した殺菌消毒方法のデメリットでもある「カット野菜の袋を開けた時に、塩素っぽいニオイがする」などの悪影響を回避することができます。
また、消毒液の除去を目的とした洗浄が不要なため、野菜の栄養の流出も少なく済むなどのメリットもあります。
1-1-3.電解水を利用した殺菌消毒
電解水とは、水と塩を電気を利用して作られる水のことです。
そして、電解水には、洗浄力に優れたアルカリイオン水や除菌力に優れた酸性電解水など、特徴を持つ種類があります。
カット野菜の殺菌消毒に使われる電解水は優れた殺菌力を持つ酸性電解水で、酸性電解水による殺菌消毒は、次亜塩素酸ナトリウムと比較しカット野菜の食品組織に影響を与えにくいため、シャキシャキとした食感を損ないにくいメリットがあります。
また、薬品を使用しないため、クロロホルムなどの生成物が発生しにくく、地球環境に配慮した殺菌消毒方法といえます。
そして、オゾンを利用した殺菌消毒と同様に、消毒液の除去を目的とした洗浄はいらないため、食品の安全性においても向上している殺菌消毒方法といえるでしょう。
1-2.食品の変色を防ぎ、鮮度を維持する食品添加物とは
カット野菜を使用したサラダなど生野菜を使用した食品の中には、変色を防ぎ、鮮度を維持することを目的に、食品添加物が使われているケースが少なくありません。
そういえば、カット野菜の殺菌消毒に使用されている次亜塩素酸ナトリウムも、食品添加物ですね。
そして、サラダの消費期限を長くすることを目的に、調味料や酸化防止剤という名称で食品添加物が含まれているケースもあります。
でも、スーパーやコンビニに並んでいるカット野菜のラベルの多くは、食品添加物の表示がありません。
じつは、カット野菜の殺菌消毒に食品添加物が使われていても、スーパーやコンビニで売られているカット野菜のラベルに食品添加物の表示がないのには、いろいろなカラクリがあるんです。
1-2-1.食品添加物の表示免除のカラクリ
現在の食品添加物の表示におけるルールでは、食品加工の際に使用した食品添加物については、表示をすることが義務つけられています。
しかし、食品添加物の表示には、パッケージに食品添加物が使われていることを表示しなくてもよい「食品添加物の表示免除」という例外が存在します。
食品添加物の表示免除には、いろいろなケースがありますが、カット野菜において、特に注意したいのは「加工助剤」として食品添加物が疲れているケースです。
加工助剤とは、食品を加工する際に使われる食品添加物の中で、食品が完成する前に除去されたり中和されるものをいいます。
そして、加工助剤として食品添加物が使われていると認められるケースについては、カット野菜のパッケージやラベルに、食品添加物が使われていることを表示する義務が免除されます。
つまり、カット野菜やサラダの原材料を見て、食品添加物が記載されてなかったとしても、表示免除により加工途中で食品添加物が使われている可能性があるんです。
なお、食品添加物の表示免除に関する詳しい情報は「食品添加物なしの食生活は可能?避けたり減らしたりしながら健康的に付き合う方法」でご紹介しています。
1-2-2.食品添加物の解釈よるカラクリ
もし、カット野菜やサラダのラベルに「保存料は使用していません」と書かれていたとしても、安易に食品添加物が使われていないと判断してはいけません。
なぜならば、食品に使われる食品添加物は、同じ成分でも、解釈が異なれば違う目的として使うことが可能だからです。
たとえば、ph調整剤は、一般的に食品が腐ることを防いだり保存性を高めたりすることを目的とする「保存料」として使われることが多い食品添加物です。
しかし、ph調整剤は、食品が酸化することにより品質の低下を防止することを目的とする「酸化防止剤」として使われることもあります。
ph調整剤を、「保存料」として使用するか、「酸化防止剤」として使用するかの判断や決定権は、商品を買う側の私たちではなく、商品を作る側が握っています。
つまり、「ph調整剤を保存料として使っていない」の言葉の裏側には、ph調整剤を酸化防止剤として使っている可能性が隠れているかもしれないんです。
また、「保存料は使っていません」ということは、裏を返せば、それ以外の添加物を使っているかもしれないということも覚えておきましょう。
2.野菜を薬漬けにしたり食品添加物を使うことに危険や害はないのか
私たちが、コンビニやスーパーで手にするカット野菜には変色を防止するために、薬品による殺菌消毒が行われている可能性があり、カット野菜を使って作られているサラダやサンドイッチにもたくさんの食品添加物が使われている可能性があります。
では、薬漬けにされたカット野菜や食品添加物まみれのサラダやサンドイッチに、危険性や害はないのでしょうか?
2-1.安全性は確保されている
カット野菜を殺菌消毒することは、安全な商品にする為に欠かせない作業です。
なぜならば、微生物や菌を除去することで、食中毒による危険性を排除することができるからです。
そして、、薬品で殺菌消毒されたカット野菜は、殺菌消毒後、十分にすすいであるので、たとえ、薬品が残っていたとしても微量で健康被害が出る量とは考えられません。
つまり、次亜塩素酸ナトリウムを使って殺菌消毒するリスクよりも、食中毒による悪影響の方が明らかに大きいんです。
また、食品添加物についても、使用可能な食品添加物は厚生労働省の食品添加物リストで定められていて、使用量も「ADI」と呼ばれるルールが設けられ、根拠のある管理基準のもと安全に取り扱われています。
■参考:食品添加物は本当に危険?偏った情報に踊らされてしまう食品添加物の問題点とは
つまり、私たちが手にしているカット野菜やサラダは、安全性が確保された状態で販売されているんです。
2-2.殺菌消毒することによるデメリット
手軽に野菜を摂ることができるカット野菜やサラダは、 危険性や害について心配する必要はありませんが、殺菌消毒や食品添加物を使うことによるデメリットがまったくないわけではありません。
たとえば、野菜に含まれるビタミン類には、「脂溶性ビタミン」と「水溶性ビタミン」があり、水に溶けやすい水溶性ビタミンは、液体につけることにより流れ出し減ってしまいます。
■参考:野菜不足解消にカット野菜は無意味?野菜の栄養に関する得する話
また、食品添加物は現在の基準では安全と判断されていますが、日本国内と海外で基準が異なったり、今後新たな危険性が指摘される可能性があるなど、リスクはゼロではありません。
つまり、コンビニやスーパーで手にするカット野菜やサラダは、便利さや安全性というメリットと栄養の流出などのデメリットが共存する食べ物なんです。
3.カット野菜の殺菌消毒に関する意外な問題点とは
カット野菜の殺菌消毒は、非常に有益で微生物や菌を除去し安全性を確保するため必要不可欠なものと判断することができますが、カット野菜の殺菌消毒に関する情報は、意外なところで意外な課題や問題点を生み出しています。
3-1.偏った根拠に乏しい情報を植え付ける無添加商法
コンビニやスーパーで売られているカット野菜やサラダは、安全性が確保されているにもかかわらず、「カット野菜はよくない」などと危険性をあおり、「食品添加物たっぷりのコンビニのサラダは体に悪い」、「薬漬けにされたカット野菜には栄養がまったくない」などと論理的な根拠に乏しい問題点を指摘する声が後を絶ちません。
この背景には、消毒されたカット野菜は有害、無農薬野菜は健康という偏った情報を植え付けることによって成り立つ、「無添加商法」や「マッチポンプ商法」と呼ばれる販売方法が存在する可能性が指摘されています。
3-2.消毒方法を確認することが困難
これまでご紹介したとおり、カット野菜の殺菌消毒には、いろいろな方法があります。
そして、薬品で殺菌消毒されたカット野菜は、十分にすすぎ洗浄が行われて安全性が確保されているとはいえ、カット野菜を薬品漬けしているというイメージもあり、可能な限り避けたいと感じてしまうのは仕方のないことです。
しかし、どのような方法で殺菌消毒されたのかについての情報は、ほとんどの場合、カット野菜のラベルを見るだけでは確認することができません。
カット野菜がどのように殺菌消毒されているかについては、電話などでメーカーに直接問い合わせをしたり、メーカーのホームページを確認するなど、いずれにしても商品を購入するとは別の自発的な行動でしか確認することはできません。
私たち消費者が、安心してカット野菜を食べるためには、カット野菜の安全性はもちろんのこと、殺菌消毒方法についてもさらにオープンにわかりやすく公開する必要があるといえるでしょう。
4.まとめ
いかがでしたか?
カット野菜がすぐに変色しないのは、薬漬けの影響ではなく、適切な鮮度管理や衛生管理の努力の結晶であることを知って、ホッとした方も多いのではないでしょうか。
カット野菜の殺菌消毒は栄養素が流れ出てしまう可能性があるなど、まだまだ課題があることは正直否めませんが、手軽に野菜を必要な分だけすぐに手に入れられる便利さは、私たちの食生活を豊かにしたり、忙しい私たちの代わりに下ごしらえをして気持ちに余裕を与えてくれるなど、いろいろな面において大きな可能性を秘めた食材といえます。
マスコミ受けするようなカット野菜のデメリットや危険性ばかりに注目する必要はありませんが、カット野菜のいい面だけに注目するのも考えものです。
あなたの生活スタイルにとって、カット野菜や役に立つものなのかや必要なものなのかを見極めた上で、賢くカット野菜を利用し、健康的で充実した食生活をエンジョイしてくださいね。